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選挙カー運転手のアルバイトをしてきた話

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「この日程で運転手のアルバイトできる人、誰か知らない?」

と、突如として連絡が来たのは、6月末のこと。2019年7月4日に公示される参議院選挙での選挙カー運転手を探している、なんて突拍子もない話だった。

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全国比例代表のバイトは無職しかできない

僕の元へ連絡をくれたのは僕の知り合いなのだけども、その人の友人が実は参議院選挙に初めて立候補したのだ。立候補者はそこそこ有名人なので僕も名前ぐらいは知っていたのだけども、まさかそんな話が来るとは思わなかった。

どれどれ、一体どんな日程なんだろう…?と思って話を聞いてみると、候補者は比例代表選挙に出馬している関係で全国を飛び回るらしく、

これに付いていける人は無職なのでは?

と思うレベルであわただしいスケジュールが組まれていた。

幸運なことに(?)、僕は無職と疑われても仕方がないようなスタイルで仕事をしているので、実際何日か開いている日があった。ただこの人のために全国を飛び回る気にはなれないし、そもそも僕の住んでいる県に来ない時点でなんだかな~と思ったので、

「隣県を回る2日間なら行けますよ!」

という返事をしたのだった。

選挙カー運転手のアルバイト料は日当最大1.5万円

実際に選挙カーに乗った話をする前に、バイト代の話をしておきたい。

公職選挙法に従ってそこで働く人の賃金というのは定められている。選挙カー運転手の場合は「車上運動員」という区分になるので、

  • 日当:15000円以内
  • 交通費
  • 宿泊費:12000円/1泊(食事料2食分を含む)
  • 弁当料:1000円/1食、1日に付き3000円分
  • 茶菓料:500円/1日

というお金がもらえる。おやつは500円までなので、今どきの小学生と同等だ。

「日当1.5万円なら意外と悪くないな!」

と思うかもしれないが、拘束時間がかなり長い。

選挙活動は朝の8時から夜の8時まで12時間が認められているのだが、その間にはマイクを使った演説やビラ配りが行える。逆に言えば、その前後であっても朝の挨拶や握手など地味~な活動を行うことはグレーゾーンながら認められている。また、あちこちを動き回る比例代表の場合は、翌日の朝が早いこともあって前日の夜に次の予定地まで移動を行うため、割と夜遅くまで拘束される。

というわけで実質的な拘束時間はなんだかんだで朝の7時から夜9時ぐらいまでとなり、時給換算すれば1000円/時程度である。

さらに僕の場合は活動予定地が自宅から約2時間と遠いため前泊を行ったり、解散後も家に帰るまでの長旅があったことを考えると、これっぽっちも時間単位では割に合う仕事ではなかった。それでもやってみたのは「選挙カーのバイトなんてやったことがない」という、単なる興味本位に過ぎなかった。

ちなみに振込日は事務所にもよるが約1か月後なので、今すぐお金が欲しい人には向いていない。

仕事内容は運転のみ

もう一点、仕事内容についても記載しておく。あらかじめ事務所の方に聞いていた情報では、

  • 選挙カーの運転
  • もしかしたらビラ配りやのぼり持ちをする可能性があるかも

の2点だったが、実際には車の運転しかしなかった。これは後述するが、いわゆる箱モノを屋根に付けた「選挙カー」がいろいろな事情があり現場になかったことが一つの理由として挙げられる。なので少し違った状況であればビラ配りをした可能性もあった。

また服装についてが、夏ということもあって上はポロシャツを支給してもらえた。ズボンは黒のチノパン等の違和感のない服装であれば問題なし。一応黒っぽい靴を用意してなるべく目立たないように心がけたが、僕の場合はほとんど車から降りることが無かったので、特に気にしなくてもよかったように思う。

全く予定通りに動かない

さて、バイトを行う日程は約半月前に決定させたのだけども、選挙事務所の秘書さん曰く、

「予定されているこの日程は変更される可能性があるので、近くなったらまた連絡しますね!」

とのことだった。なぜ日程が変更されるかと言えば、選挙というのはその地その地での有力な政治家たちと協力して行うので、彼らのスケジュールによってかなり左右されるためだ。

慌ただしく日々を過ごしていた僕は選挙バイトのことなんてすっかり忘れていたのだが、予定日の2日前になっても何の連絡もないことに気が付いて、こちらから連絡をした。すると案の定、

「当初の予定からいろいろ変わっていて、もうすぐ担当してもらう日の予定が決まるのでまた連絡し直します。」

との返事が来た。ただその後も連絡が来なかったので、予定していたバイト初日になっても僕は家でいつも通りの仕事をしていたのだった…。

前日の夕方に突如として決まる日程

「まぁ別に選挙カーのバイトとかしなくてもいいか」

なんて思っていたその日の夕方に連絡がやってきた。曰く、「明日の運転手をやってほしいのですが、今から移動することは可能でしょうか?」とのことだった。

幸運なことに僕は無職に近いので、そのあまりに唐突過ぎるお願いに対し全く問題なく快諾。ただし向こう側の予定があまりにも変わりすぎたため、当初2日間行う予定だったバイトは1日に短縮された。

その日の夜に電車に二時間揺られ、某地まで移動。選挙事務所の方に予約してもらったビジネスホテルで一泊し、翌日の朝6時45分の待ち合わせに備えるのだった。

企業回りを主とした選挙活動

朝っぱらから待ち合わせをしていた選挙事務所の秘書さんが10分遅刻してきたのだが、無事に合流して、10人乗りのハイエースをレンタカー屋で借りた。

そう、今回のバイトではいわゆる「選挙カー」は無く、現地調達したレンタカーで地元の企業などを回って挨拶を行う、という活動のサポートを担当したのだ。元々はウグイス嬢を乗せた選挙カーの運転を行う予定だったので、ここに関しては少し残念だった。

レンタカーを運転し大きな駅まで移動すると、すでに駅前では立候補者が挨拶活動を行っていた。時刻は大体7時半ごろだったと思うが、ここで「駅前ロータリーに路駐で40分待機」を命じられた。

ホテルに朝食をつけてくれていなかったのでお腹が空いていた僕は、コンビニへ走り朝食をゲット。それぐらい用意してくれればいいのになと思いながら車の中でお腹を満たした。

その後、本日の予定が書かれた紙が配られたので、念のため最初の二つをナビにセット。ただ、実際には地元政治家の人たちの車が常に先導してくれたので、ナビの必要は無かった。

そうしているうちに朝の活動を終えた選挙活動メンバーが乗り込んできて、次の予定地へと移動するのだった。

当日の予定すらその場で決まるアバウト加減

僕が運転していた車の中のメンバーを紹介しよう。

  • 僕:運転手
  • 立候補者
  • 選挙事務所秘書兼ウグイス嬢(女性)
  • 選挙事務所秘書(男性)
  • 都内の美容室から派遣されてきたヘアメイク(女性)

の5人だ。これだったら普通のミニバンでよかったのでは…?という疑問が湧いたが、僕の金でレンタカーを借りているわけではないので問題ない。

彼らと地元政治家とのやり取りで当日のスケジュールに沿って動いていくのだが、8個ほど並べられていた当日スケジュールの内、3個目の時点でもうすでに予定通りになっていなかった。この場に置いて「予定」という言葉は、女心と秋の空と並ぶぐらい不安定なものらしい。

行き先が全く分からないまま先導車についていくというのは単純に不安だが、この先導者のドライバーというのは、温厚そうな顔に見合わない非常に雑な運転で、急な車線変更を繰り返すので非常に厳しいものがった。その割に高速道路では低速で追い越し車線に居続けるので、彼が煽り運転を助長してることは間違いなかった。

幸運にも豪勢な昼食にありつけた

訪問先の企業の駐車場に止め15~30分ほど待機し、また移動、というのをいくつか繰り返すと、ちょうど昼食時になった。明らかに高そうな寿司屋に入ると、地元政治家と一緒に昼食をいただいた。これは非常においしくて満足感が高かった。

「今日まではこんなにゆっくりと昼飯を食べる時間が無かった」

と立候補者が言っていたので、普段はコンビニかどこかで適当に食べているらしい。実際他のメンバーに話を聞いても「今日はかなり時間に余裕がある」ということを口をそろえて言っていたので、僕はラッキーなタイミングでバイトに入れたらしい。

…と言いながら、次の予定(?)が迫っているのか、皆やたらと早食いで寿司を放り込んでいくので、きちんと味わっている時間はなく、もったいないなという感は否めなかった。

絶対にコインパーキングには止めないという強い意志

午後は若干時間に余裕があるらしく、街中での演説を行うタイミングを3つ設けることが決まったらしい。ここは大都会で、当然人通りの多い場所を狙って演説を行う。当然適当なコインパーキングで待機するのだろう、そう思いながら先導車についていっていたのだが、

「ここで止めて待機しておいて」

といわれたその場所は繁華街のど真ん中。そんな場所に30分以上の路駐を命じられるのだからたまったものではない。ほかに止めた場所も、交差点から5m以内でかつバス停が目の前という路上駐車禁止区間の役満のような場所で、心苦しさしかなかった。もしこれで僕が警察に違反で捕まったらどうすればいいのか。絶対に警察は来ないでくれ、文句ならあそこの候補者と政治家に言ってくれ、と心で祈りながら待機するほかに僕に残された道は無かった。彼らはまず政治の前に道路交通法を学ぶべきだ。

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楽だけどあんまりやりたくない

結論としては、選挙カーの運転手は、非常に楽な仕事ながら、とてもじゃないが人にお勧めすることができないことが分かった。

先導車の運転技術にもよるが、基本的に街中をぐるぐると回るだけなので特別に難しいことはなかったし、ビラ配りなどを命じられることもなかったのでただただ楽だった。暇な時間は車内に残っているメンバーと一緒にコンビニやトイレに行ったりと、割と自由に休憩時間を取ることもできた。

仕事中のほとんどの時間は待機していたので、本を読む時間に充てるなどしないと退屈極まりない。かといって待機中に何かじっくりと作業できるか?と言われるとそんなことはない。彼らは予定があまり決まっていないので、突如として車に乗り込んできて次の場所へ移動することを命じられることさえある。スマホで適当にSNSのチェックやネットサーフィンしてるぐらいがちょうどいい。

また、候補者らは一刻も早くお偉いさんに挨拶しようと停止直前の車から降りようとするし、まだ動いている車のドアに手をかけ開こうともする。ドアのロックは自分の手元で操作できる状況にしておかないと、候補者が勝手に自殺したのにこちらの過失が問われることになってもおかしくない。これはあまりにハイリスクすぎる。

また車内という閉ざされた環境にいるためか、立候補者や事務所の関係者はなんとなくこちらに対して心を許せる状況になってしまう。車内では基本的に和気あいあいとした雰囲気でいられたが、時折どうでもいい愚痴をこぼしたり、ちょっとした失言をしたりする。また様々な業界用語や身内ネタが飛び交うので、あまり心地よい環境であったとは言いずらい場面もあった。彼らは僕に金を払って一票を失ってしまっているのではないか?と思うことすらあった。

妙に予定が決まらなかったり不安定だったりするのは、おそらく今回担当した立候補者が初選挙だったことが理由の一つとして挙げられるのだと思う。スタッフを含め皆若手でノウハウが構築されておらず、全ての日程は基本的に他人まかせな面があった。なので、もしベテラン候補者の車を担当したならば、また違った印象を受けたのかもしれないことは、明記しておきたい。

しかし、もし次回依頼があった時もバイトをするか?と言われれば、正直あまりしたくない。もし地元に来て、サクッと行ってサクッと帰れる、というのであればそこまで悪くないが、わざわざ長距離移動してまでやることではない。ただ話のネタとしては面白いので、そういう意味では悪くないアルバイトだったと思う。

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